前回は義歯不適合の病名について書きました。
今回は、〈義歯破損〉と〈増歯〉についてです。
義歯破損と増歯は使い方に明確な違いがあります。
簡単に言うと、
義歯破損は使っている義歯を修理した場合で、修理前と修理後の義歯の部位は変わりません。
増歯は、使っている義歯の人工歯が増えた場合で、増歯前と増歯後の義歯の部位は、増歯後の方が多くなります。
このように、ポイントになるのは、義歯の部位が増えるかどうかです。
具体的にいくつか例をあげてみましょう。
①右上4~左上6の義歯にヒビが入ってしまい、補強した。
この場合の病名は〈義歯破損〉で、修理の点数を算定します。
②上顎に 654 | 345の義歯があり、3の人工歯が取れてしまい、3番の人工歯を新たに着けた。
この場合の病名は〈義歯破損〉で、修理の点数と3番の人工歯料を算定します。
算定内容は多少異なりますのが、①②どちらも義歯の部位は変わりませんので、病名は〈義歯破損〉です。
③右上4~左上6の義歯があり、右上5番が自然脱落したため、右上5~左上6の義歯にした。
この場合の病名は〈MT(増歯)〉で、修理の点数と5番の人工歯料を算定します。
④上顎に 654 | 345の義歯があり、左上2番を抜歯して654 | 2345の義歯にした。
この場合の病名は〈MT(増歯)〉で、修理の点数と2番の人工歯料を算定します。
③④の場合はどちらも、義歯の部位が増えますので、病名は〈MT(増歯)〉にします。
次にそれぞれ算定できる内容についてです。
〈義歯破損〉
基本は、修理の点数 です。
人工歯が脱落、破損して、新たに付け替えた時は人工歯料、歯リハ1が算定できます。
〈MT(増歯)〉
基本は、補診、修理の点数と増歯した部位の人工歯料、歯リハ1が算定出来ます。
(補診は、28年から一装置ごとに算定できるようになりました。
ただし、義歯新製、増歯、床裏装で補診を算定後は、3ヶ月経過していないと同一部位の補診は再度の算定ができません。(4ヶ月目から算定可,下顎と上顎など部位が異なれば算定可))
人工歯の算定について
人工歯料は増歯した部位だけ算定でき、前歯(左3~3)、臼歯(左右4~7)でわかれており、さらに前歯の片側、両側、臼歯の片側、両側の4つに分かれています。
例をあげると
右上3を増歯 → 前歯片側
左下2を増歯 → 前歯片側
右上2と左上1を増歯 → 前歯両側
右上1と左上1を増歯 → 前歯両側
右上4を増歯 → 臼歯片側
左上7を増歯 → 臼歯片側
左上4?6を増歯 → 臼歯片側
右上5と左上6.7を増歯 → 臼歯両側
左下2と右下5を増歯 → 前歯片側と臼歯片側
左下3と左下45を増歯 → 前歯片側と臼歯片側
左下3と右下2と左下45と右下7を増歯 → 前歯両側と臼歯両側
このように、人工歯料はそれぞれの部位に対応した点数を算定します。
〈義歯破損〉、〈MT(増歯)〉どちらも必要に応じて印象、BT、鋳造鉤が算定でき、印象から修理、増歯までを一日で行なった場合は「長時間待機」や「一日二度来院」の摘要を入れます。
通常は印象とBTで1日、修理、増歯に1日で、実日数が2日必要です。
それから修理や増歯の頻度について
回数の制限などはどこにも書いていませんが、度重なる修理や増歯の算定は、計画性が認められなければ問題になります。
そのため頻度としては、6ヶ月で2回程度が限度です。
あんまり頻繁に壊れるなら義歯の設計自体に問題があると思われてしまいますし、新製すべきでしょう。
何か特別な理由があるなら、それを摘要に記載しておくのが安全です。
「患者の義歯の取り扱い不良により床破損のため修理」などと入っていれば、多少大目にみてもらえるでしょう。
時々いますよね、何度修理しても壊してくるおじいちゃん…
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